鼻を摘ままれ、限界がきても無理矢理暴れたら、手首や足首を怪我してしまいそうで、
それがわかる位には冷静で、無理のない範囲で手足をばたつかせる程度しか暴れられなかった。
鼻を摘ままれているだけといっても、口はストレッチフィルムで固定されて開けられないので息を吐くこともできない。
声を出すこともできない。
そして、暴れることもできない。
できない事ばかりだった。
もう、限界なのに彼は指を離してくれなくて、必死で口で息をしようとしたらできた。
必死すぎて唇痛くなるくらいに息をしようと口を開けた。
彼はそれに気づくとすかさず口元ももう片方の手で塞いだ。
そんな…。
結局は元通り。また限界まで息をさせて貰えないんだ。
一度解放されると彼は言う。
「口元直さないとね。」
そういって、決して外れた訳ではないのに、上からストレッチフィルムで口元部分を補強されてしまった。
そして彼はまた私の鼻を摘まんだ。
そして一瞬解放してはまた摘まむ。その繰り返し。
これは、見た目以上に精神的にとても削られてしまう。
安堵からの絶望。その繰り返し。
私は体の自由を奪われ、呼吸を奪われ、そして心も奪われていた。
さっきよりきつく口元は巻かれてしまったので、もう口を開くことはまったくできなかった。
まるでとどめをさすかのように、彼は私の鼻もストレッチフィルムで覆ってしまった。
絶望の中、私は喚くことも出来ず、暴れると余計息が出来ないから暴れることもほとんど出来なかった。
気づいたら彼が突然ストレッチフィルムを激しめに破いた。
どうやら「無」になってしまっていたみたいで正直この時の記憶が凄く曖昧になっている。
静かに息をしていようというみたいな気持ちだったわけでもなかった。
苦しかった、という記憶すら残ってない。
「今、生きるの諦めたでしょ。」
彼にそう言われ、そんなつもりはなかったのが逆に少し恐かった。
無意識に「無」になっていたことが。
ただ、その彼の言葉はインパクトがあって覚えてる。
彼はきっととても焦ったんだろう。
拘束も解いてくれて、ついに大きな圧縮袋の時間がやってきた。
ゼンタイのまま、筒布に入れられる。
筒布の上から荷物のように縛られた。
首元にはまた首輪を嵌められ、苦しさに喘いでしまう。
でも、すぐに喘いでる場合じゃなくなるってわかってる。
できるだけ息を乱さないようにしないとって湧き上がる快感を抑えようとしていた。
私の身長以上ある圧縮袋をベッドに広げ、これまた荷物のように私を圧縮袋の中に押し込む。
同じ「圧縮袋」でも何か違うかもしれない。直立状態というのも初めてで未知の世界。
いつもと同じように苦しいのか、もしくはもっと苦しいのか。どちらか。
「最初はすぐ出してあげるよ。」
そういって彼は袋の口を閉じる。
吸引器の音がした。
布がある分少しは息が出来るんだろうかと思ったけれど、しっかり圧縮されてしまって、
自分が吸い込んでいた分しか息は出来なかった。
きっとまっすぐの状態を見たいんだろうと、出来るだけ暴れないようにって思ったけど、
やっぱり苦しくなって動かせる膝下をばたつかせてしまう。
約束通り初めは悲鳴をあげ始めてすぐに出してくれた。
思いっきり悲鳴をあげる前に出してくれたことが「すぐ」と思ってしまうあたり感覚がマヒしているなと感じた。
マチがないからか、空気が入り込む皺が少ないからか、いつもより圧縮感と空気のなさを感じた。
いつものサイズより、キツイと感じた。
いやいや・・・もう出たい。
たった一度でそう思ってしまったけれど、そんなことを彼が許してくれるはずなんてなかった。