息ができないってスイッチが入ると悲鳴を上げ続けるしかなかった。
私が寝かされている左側にソファがあったはずで、彼の気配もそのあたりにあった。
私は彼にアピールするように、左をむいて暴れていた。
あんなに動けないと思っていたのに、本気なると上半身持ちあがってた。
ずっと左側を向いていた。こんなひどい目にあわせているのは彼なのに、彼に救いを求めてた。
取って、お願い、ねぇお願い・・・助けてって思いながらずっと彼の気配がある方に暴れて、悲鳴をあげてた。
もうさすがに解放してくれると思っていた。
そんな私の気持ちをよそに彼は新しい遊びで私を責め始めた。
また、テープで息を遮られる。
一度苦しいってスイッチが入るとなかなか「無」にはなれなくて、すぐに悲鳴をあげてしまう。
もう限界・・・と思った瞬間解放されてほっとする。
なのに、息をしっかり吸う前にまた彼は私の呼吸を遮る。
何度も何度も繰り返されているうちに、酸素を感じても息をするのがこわくなった。
「吸おうとしたら塞がれる。」
そう思い始めると私はいつ息をしたらいいのかわからなく、ずっと苦しかった。
息を吸える一瞬のチャンスさえ自ら手放していた。
もうそうなってしまったらテープで塞がれていようが塞がれてまいが一緒だった。
終わらない苦しみ。
「気が狂いそうだよね。」
みたいなことを言われたような気がする。
あぁ、楽しんでいる。
私の命で彼は楽しんでいる。
一呼吸おいては何度も繰り返された気がする。
気が狂ってしまえば楽なのに、パニックになればきっと解放してくれるのに。
気絶してしまえば何もわからなくなるのに・・・。
私はそのどれにもなれなかった。
何度も何度も繰り返され、やっとテープを外してくれてこれで解放されると思っていた。
「もう出たい?」
首を横にふる。
「そうだなぁ、そろそろかなぁ。」
そういいながら、彼はまた私の鼻にテープを貼る…。
あまりよく前後の状況は覚えていないけれど、インパクトが強すぎて、絶望感が強すぎて覚えていることがある。
ビニール袋を被されて、その上から何かを被された。
その何かがなんなのか、なぜかすぐわかった。
全頭マスク・・・。この瞬間が一番怖かった。絶望感が強かった。
すぐに助けて貰えない恐怖。
後ろの編み上げまでは絞められていなかったけれど、もうほとんど私に体力は残っていないなか、
全頭マスクから解放されても私の顔にはビニール袋が張りついている。
ビニール袋から解放されても私は鼻でしか息が出来ないのに…。
そんな風にあの状況下で正しく恐怖を感じていた。
パニックになんてなれるはずないんだ。
怖くて怖くて、でも逃げることもできない。
私は、無力だった。
これが最後だっただろうか。
「仕方ないからそろそろ出してあげようかな。」
やっと本当に解放してくれた。
怪我をしないように丁寧に丁寧にテープを切ってくれる。
首辺りを切る時に
「動くなよ。」
と言われ、彼は普通に危ないから言ったんだけど、つい萌えてしまった。あぁどうしようもないマゾ心・・・。
解放されると寒くて寒くて自分で抑えられないほど体がぶるぶると震える。
自分の体なのに、なにこれっておもしろかった。
水分補給をして少し休憩した。
まだ、チェックアウトの時間には余裕があった。
きっとこれで終わりじゃないんだろう。次は何をされるんだろう・・・。
恐怖なのか期待なのかよくわからない感情だった。