彼とは暫く会ってなかったし、SM欲も消えうせていた。
色んなことに疲れてしまったのか、たくさんの感情を手放してからSMしたいとあまり思わなくなってた。
彼はとてもひどいから。怖かった。
こんな状態で彼の責めを受けきれるんだろうかって。
マゾヒストに戻れるんだろうかって。
そんな心配はするだけ無駄だった。
シャワーを浴びて、ソファに座る。少したわいもない話をした後、
「向こう行こうか。」
とベッドの方へ促された。
始まりの合図。
裸を見られることでさえ恥ずかしかった。
ストレッチ素材の全頭マスクを被せられ視界を奪われた。
体に巻いていたタオルを取られ、ストレッチフィルムが巻かれていく・・・。
久しぶりの拘束感。すぐに息が乱れる。
こんなことで息が乱れてしまう自分が恥ずかしい・・・。
彼は時に抱きしめるようにしながら私の体をフィルムで覆っていく。
そして、まるで見透かしているかのように言うの。
「まだはやいよ。」
と。
わかってる、わかってるよ・・・。
これくらいで息を荒げてたらだめだって。
でも・・・。
マスクを被せられたまま、鼻と口の部分と胸以外全て覆われた。
ベッドに寝かされ、ひとしきり遊ばれる。
もう、何も私の自由にできないこの拘束感は、悲しみのない絶望だった。
息を吸うことですら、生きる最低限のことですら、私は私の自由にならないんだ。
彼はそれをよくわかっている。
私が感じるのも苦しむのも、生きるも死ぬも自分の掌の上にあるってことが。
巻かれていない鼻と口に、別のフィルムがのせられる。
息もままならないのに、彼は更に私の上にのって体を圧迫する。
そうやって私は人じゃなくなっていく。女じゃなくなっていく。
そうかと思えば不意に乳首に触れられ弄ばれ甘噛みに体は過敏に反応する。
もう自分の意志なんてそこにない。体が勝手に反応してる。
苦しいのに。苦しくてしょうがないのに。